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観ないとソンダと思ったので

だれでも発信できること自体が良いことと聞いたので、美術展や映画、音楽などの感想など書いてみます。

ティルマンス展 「Your Body is Yours」@国立国際美術館を観ました

アート

国立国際美術館で開催されたティルマンスの個展、「ヴォルフガング・ティルマンス Your Body is Yours」を見ました。

いつもの国立国際美術館の客層から平均年齢マイナス5から8歳、シャレオツ度3倍くらいの感じの客層。
会期終盤だとしても予想以上の人出に、あらためてティルマンスの人気を実感しました。
そういえば、何年か前の森山大道の個展も結構な人出+シャレオツ度「高」だったので、ティルマンス人気というか、やっぱり現代美術と写真の客層の違いがあるわけですね。

ティルマンスの個展を見るのは初めてでしたが、一口に言うと面白い、飽きないという感想です。
展示会場自体がティルマンス自身の手によるレイアウト、デザインということで、非常にリズムよく考えられた構成だったのだと思います。

展示作品は大別して、

  • 友人やパートナーとのポートレートやスナップ
  • 物の形態を主題にした作品
  • カメラやフィルムを光学器として扱ったミニマルな作品
  • 政治的なメッセージを展開するコラージュ作品

などからなっていました。

代名詞とも言えるポートレート、スナップは、まさにティルマンスを見ているという感覚で、来場者が一番楽しめるものだったと思います。
クラブやパーティ、男女の肌のクローズアップなどの、無軌道ながら、生を感じる瞬間を写し取ったイメージが良く知られていますが、他にも植物、とくに成長している植物の写真が多く、まとめてみると、どの写真も強い生命力を感じさせる点が共通していたと思います。夜景や、車のヘッドライトだけを写した写真でも、それを見ている主体が意識されるためか、肉体的な感じがするのが不思議でした。

もともと、ティルマンスの90年代の人気というのは、クラブカルチャーやゲイカルチャーに代表される、タブーに触れる刺激を伴う自由への指向が、時代の先端を切り取るファッション性やオシャレ感と相まって共感を得ていたのだと思いますが、最近の作品まで合わせてみると、ティルマンスの自由への指向というのは世代や文化の表象としてではなく、本質的に作家の表現の中心にあるということが分かります。

展示の中盤に置かれた、移民問題や、貧困問題、同性婚に関するリアルタイムな新聞記事をコラージュした政治的な作風は、オシャレ感皆無のどシリアスなものでしたが、これも、90年代から一貫した、自分が自分として生きること(Your Body is Yours)への指向の中で捉えられるものだと思います。
観客も皆熱心に見ていて、展示のリズムや構成の力もあると思いますが、ティルマンスの写真に惹かれる要素には、もともとこういうシリアスな面が含まれているのだと思いました。

展示の後半には、戦場にいる、あるいは戦場に向かう兵士の新聞記事写真を切り取ったシリーズがありましたが、展示前半にある友人たちとのプライベートを撮ったリラックスした生の時間との対照が際立つ、乾いた緊張感を感じさせる写真で、個展のタイトルである「Your body is yours」の示すものについて、あらためて意識させられました。

一方で、印画のグラデーションや単色の色面だけで構成された「シルバーインスタレーション」、立体的な素材としての紙の美しさを追求したような「ペーパードロップ」などのミニマルで実験的な作品群は、物としての写真、プリントに視点を広げながら、純粋な色彩や形態の美しさを感じさせる印象深いもので、展示の流れのなかで変奏的な役割を果たしていたように思います。

森山大道は、写真集と写真展の違いを音楽に例えて、写真集をアルバム、写真展をライブと語っていましたが、ティルマンスの個展は非常にアーティスティックで完成度の高い、多くの観客を満足させるライブのように感じました。

そういう意味では、展示全体を通じて「Your Body is Yours」というメッセージを伝えているようにも思いました。

wired.jp