観ないとソンダと思ったので

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ボブ・ディランが英語学習に効果的な7つの理由(その1)

ボブ・ディランが、「ノーベル文学賞を喜んで頂戴します。来年コンサートに寄ったついでに受け取るので置いといてください。」と表明してからしばらく経ち、騒動も落ち着いてきたころですが、その歌詞が注目されているこの機会に、以前から僕が実感していたことを書いておきたくなりました。

それは、ボブ・ディランの曲を聞くこと、というか、洋楽の中でも特にボブ・ディランを好きになることは英語学習に大変効果があるのではないかということ。

英語の曲を聞いたり歌ったりすることが英語の勉強になるというのは、間違いのないところで、英語学校なんかでも授業に取り入れていたりするものでしょうが、一般的にはどのような音楽が使われるでしょうか。ビートルズとか、カーペンターズあたりは、よくあるかもしれませんね。ディズニー映画の主題歌とかもありそうです。

しかし、特にボブ・ディランがおすすめという意見は寡聞にして聞いたことがありません。おそらく、ネイティブでも難解という歌詞が英語学習に向くはずがないとの先入観かもしれません。

しかし、一応、それなりに英語の勉強もした自分自身の体験に基づいた意見としては、ボブ・ディランは英語学習に向いているというだけの、それなりの理由があります。

では、その7つの理由を。

1.ボキャブラリーが増える。

ボブ・ディランの歌詞は、まず言葉の分量が違います。ただでさえ長い曲が多い上に、言葉がこれでもかと詰め込まれます。その単語のジャンルも、聖書や古典文学の引用から、ブルースやフォークの常套句、スラング象徴詩的な隠喩まで多岐にわたります。その歌詞を一曲でも理解しようと調べたり、覚えて口ずさもうとするだけで、他のアーティストで同じことをする数倍のボキャブラリーに触れることになるわけです。
下記は世界初のPVともいわれる "Subterranean Homesick Blues" のビデオですが、歌詞の単語を次々にめくっていく様子は、まるで単語カードを見せながら英単語を教えているNOVA KIDSの先生のようではありませんか。ちなみに左にいる味のあるおじさんはアレン・ギンズバーグです。

youtu.be

次に"All I really want to do"の歌詞を見てみましょう。

I ain't lookin' to compete with you
Beat or cheat or mistreat you
Simplify you, classify you
Deny, defy or crucify you
All I really want to do
Is, baby, be friends with you
 
No, and I ain't lookin' to fight with you
Frighten you or uptighten you
Drag you down or drain you down
Chain you down or bring you down
All I really want to do
Is, baby, be friends with you
 
これは、「君を~したいんじゃ無い。友達になりたいだけなんだよ」という歌で6番まであるのですが、上に引用した2番までで、「~」にあたる部分に、どれくらいの動詞が出てきたでしょうか。
compete / beat / cheat / mistreat
simplify / classify / deny / defy / crucify

fight / frighten / uptighten

drag down / drain down/ chain down / bring down

いわゆる、人間関係で、できればあんまり取りたくない、取られたくない、でも取ってしまいがちな態度を表す動詞が、面白いように韻を踏んで、2番までで16個も出てくるのです。

この歌を口ずさもうとするなら、結構な動詞の学習になると思いませんか?

 

僕は君と競いたい訳でも、君を論破したい訳でも、騙したい訳でも、虐げたい訳でも、純化したい訳でも、分類したい訳でも、拒絶したい訳でも、無視したい訳でも、吊るし上げたい訳でもない。

俺は君と、友達になりたいだけなんだよ。

 

そう、僕は君と戦いたい訳でも、君を脅したい訳でも、苛立たせたい訳でも、引きずり下ろしたい訳でも、押し流したい訳でも、縛りつけたい訳でも、打ち倒したい訳でもない

俺は君とね、友達になりたいだけなんだよ

 

この曲が収録されたボブ・ディラン4枚目のアルバム「Another Side of Bob Dylan」は、それまでの「風に吹かれて」や「時代は変わる」といった曲で着せられた、社会派フォークシンガー、プロテストソングの歌い手としてのイメージを払拭するように、歌詞も音楽性も、もっと等身大の自分を表現した作風に変わったものになっています。

そのアルバムの一曲目で、こんなユーモアを交えた、皮肉っぽい歌詞を可笑しそうに歌うのが、いかにもボブ・ディランぽくて好きです。

 

youtu.be

続きは次回