観ないとソンダと思ったので

だれでも発信できること自体が良いことと聞いたので、美術展や映画、音楽などの感想など書いてみます。

JT生命誌研究館に行ってみました。

大阪府高槻市にある、JT生命誌研究館に行ってみました。

JTによって運営されているゲノムやDNAなど、生命科学に関する企業博物館で、学芸員だけでなく一線の研究者も常駐しており、各人の研究を行っている点でユニークなのだそうです。

もともと、入り口に展示してあるという、「生命誌絵巻」という絵に興味があったのですが、ホームページを見ていると、ちょうどギャラリートークもあったので、ぶらっと出かけてみたのです。

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館内に入ると、来場者は少なめ。ちなみに、申請書を記入すれば、写真撮影もOKとのこと。ちょうどギャラリートークのツアーが始まるところでした。

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大学院生の方によるギャラリートークだったのですが、これがとても面白かったです。

一時間半くらいのツアーで、館内の展示物を簡単に説明していくのですが、進化やDNAなど全く知識が無くても(無いだけに?)、聞くことすべて「なるほどー」の連続で、ずっと首を縦に振りっぱなしでした。

たとえば、チョウは種類によって、幼虫の食べることのできる植物が決まっているそうです。

植物は生存のために毒を持っているのですが、それを餌にするチョウの側でも生きなければなりませんので、解毒できるようになっている。しかしそれは、一対一の関係で、例えば、ナミアゲハであれば、みかんの葉だけが食べられる。キャベツを食べたら死んでしまうそうです。

なので、卵を産む前に母チョウは、それがミカンの葉かどうか調べる。しかしチョウの口は蜜を吸うために細長くなっていて、葉っぱの味見はできない。そのためにチョウは脚に味覚があって、脚で葉っぱを削ってそれが餌になる安全な植物か識別しているのだそうです。チョウがときどき脚で葉っぱをひっかいているのはそういう動作でドラミングというそうです。この一対一の関係は不便なようでいて、逆にチョウと植物それぞれの種類で棲み分けるため、互いに生存し続けることができる仕組みになっているとのこと。

これはJT生命誌研究館の研究成果で、科学誌Natureにも掲載されたそうです。

館内にはこの研究のためのチョウのための植物園「食草園」もありました。

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他にも、いろいろと面白い話を聞かせてもらいましたが、この研究館の建物のつくりで面白かったのは、中央を通っている「生命誌の階段」。

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DNAを模してらせん状になった階段は、一段が一億年にあたり、階段の途中に、進化の過程におけるその時点のエポックな出来事がイラストとともに、解説されています。

46億年前の地球誕生から、38億年前の生命誕生(細胞に内と外を隔てる「膜」ができたことが大変重要とのことです。)、25億年前の葉緑体の誕生による光合成の始まり(酸素の生成)、20億年前の単細胞から多細胞へと進化した生物(ヒドラ、サンゴ)の出現、5億年前の気温の急上昇、そして海中から陸上への生物の上陸。

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現代である最上段まで登って階下を見下ろせば、生物のあゆみに想いをはせることができますが、その時に、人間だけでなく、現在のあらゆる生物にも同じ進化の過程があり現在を共に生きていることを感じてほしいということでした。

確かに、人間もこの膨大な時間の中で変化してきたあらゆる生物のつながりの一部であることが感覚的に理解できる気がしました。

現在、地球上の生物で確認されているのは3000万種ほどだそうですが、ゲノムの解析によると実際には6000万種ほどいると推定されているそうです。その地球上の生物を進化の過程で扇形に表したのがこの生命誌絵巻です。

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扇の根元にあたるところが、生物の共通祖先。どんなものだったのかは、まだ分かっていないそうですが、地質学の研究成果によって、38万年前にアミノ酸があったことが発見されており、それが生物の発生とされているということでした。

上に行くにしたがって時代が進みますが、縦に生物の共通性、横に生物の多様性が表されており、そして、そのような共通性と多様性の一部として、人間も左端に位置しています。

生命誌の階段と合わせて見れば、人間は、想像できないほど遠くからの時間と空間のなかで続いてきた生命の流れの中の構成要素であり、偶然でも必然でもあり、取るに足りないものでもあり、奇跡的なものでもあるのだと思います。

この絵に描かれている生物には絶滅したものもいますし、そのスケールで見れば人間もいずれはいなくなるのでしょう。しかし、この絵を見ていると、それで終わりではない。生命というのは人類の生存すら超えて、過去から未来へと続いていく、もっと大きなものだいうことが感じとれるような気がしました。

興味がある方は、ギャラリートークは月に2回位おこなわれているので、ホームページで確認して行くことを、お勧めします。

 

www.brh.co.jp