読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

観ないとソンダと思ったので

だれでも発信できること自体が良いことと聞いたので、美術展や映画、音楽などの感想など書いてみます。

ボブ・ディランのジャパンツアー2016が最高である理由

音楽 ボブ・ディラン

只今、絶賛来日中のボブディラン、74才。もうすぐ75才。

シナトラのレパートリーを中心としたスタンダード曲と、主に「テンペスト」からの近作半々の構成で、評判も上々です。今回のツアーでは、大阪フェスティバルホールの3daysを鑑賞しましたが、個人的にも今回の来日公演はこれまでで最高だと思います。

ちなみに僕がこれまで見たボブ・ディランのコンサートはこんなところです。

1994年 大阪城ホール

1997年 倉敷市民会館

2004年 PHOENIX CONCERT THEATRE, Toronto

2010年 Zepp Osaka×3

2014年 Zepp Namba×3

2016年 大阪フェスティバルホール×3

したがって、来日公演としては、1978年、1986年、2001年は観ていません。良く考えるとネヴァーエンディングツアーが始まって以降の公演を見てきたということになります。したがって、今回の来日公演は、これまでのネヴァーエンディングツアー来日公演で最高だ!としておきましょう。

※ちなみに良かった順番をつけるとすると、ほぼ最近になるほど良いということになります。

では、どこが最高なのか?さっそく、説明させてください。

1.音響が良い。

まず、前回、前々回のZeppツアーも最高だったという前提があります。ステージ前に陣取って、スタンディングで、ボブ・ディランの曲、「ハイウェイ61」で、「ライク・ア・ローリング・ストーン」で、「デューケイン・ホイッスル」で、踊りながら熱狂できるというのは最高でした。

しかし、そこはあくまでライブハウス。チャーリーのギターもリセリのドラムも熱気と一緒に感覚に訴えかけ、体を動かすもので、アンサンブルを聞くというものではなかったと言えます。

それに比べると今回の公演は、各県で、全国屈指の音の良いホールを選んでのパフォーマンス。スタンダード曲でのボブの精妙な唱法から、各楽器の繊細なアンサンブル、テンペストからのロックンロール曲の見事なドライブ感まで、じっくり味わうことが出来ます。

2.周りを気にせず座って観られる

なにしろ、座席指定のホールツアーなので、スタンディングのように、隣に押されたり、前に突然ノッポが表れて背中しか見えないというようなことが起こりません。

歌に、音楽に集中することが出来ます。

3.歌詞が味わえる

今回のツアーはセットリストが固定です。前々回の日本公演までは、日替わりで半分くらいの曲を入れ替えていましたが、ここ数年はどこでもほぼ固定のセットリストでやっているようです。

理由としては、

  1. 予定調和を一番嫌うボブなので、日替わりを期待されることが嫌になった。
  2. 即興性よりも、今一番歌いたい歌に絞って完成度を高めることに興味が移った。
  3. 年齢的にたくさんの曲の歌詞は出てきにくくなった。

あたりが考えられますが、2あたりが正解かなあと思います。3の理由だったらファンにとってはショックかもしれませんが、今のボブは老いること、それによって失っていくものも歌のテーマとして表現していると思いますので、それであのパフォーマンスをしてくれるのであれば、個人的には全然ありな姿だと思います。

そして何より、僕はこのセットリスト固定の最大のメリットは、歌詞を予習できることだと思います。以前のように、日替わりで何の曲をやるか分からないという状況だと、あの膨大な曲からさらに膨大な言葉の集積を予習しようという気にはなれません。

しかし、明日やる21曲が分かっているんだったら、確実に予習できるはずです。

21曲は無理という方にお勧めするとしたら、Blowing in the windは当然として、それ以外では、 終盤で歌われるScarlet Town、Long And Wasted Years あたりは歌詞を理解しておくと、歌の凄みと味わい、受ける感動が大きく違うと思います。特に、Long And Wasted Years はもう、泣きます。スタンダード曲も歌詞はシンプルなので、一通り目を通しておくと良いと思います。

歌詞を見るには公式サイトもありますが、Geniusがおすすめです。

Blowin' in the wind は動画も埋め込みで見られます。

もちろん、ホールツアーで音が良いので、歌に集中して歌詞をじっくり味わえるということも言えると思います。

4.バンドのクオリティが半端ない

今のバンドのメンバー、チャーリー・セクストン(G)、トニー・ガルニエ(B)、ジョージ・リセリ(Dr)、ドニー・ヘロン(Pedal Steel / Banjo etc.)というのは、かなり長い間、レコーディングにライブに、ボブを支えている面子です。Zeppツアーでも同じメンバーで、深みのある最高なロックンロールを聞かせてくれましたが、今回のとくにスタンダード曲での繊細なアンサンブル、そしてテンペストからの曲などでのブルージーなプレイの迫力は、これまたホールの音響と相まって圧倒的です。さらにチャーリーの自在なフレージングが花を添えています。ボブがいくら自由にタイミングやメロディーを崩してみても、このバンドはすぐにアジャストし、ボブの歌を支えます。これは、バンドからのボブの音楽、歌への特別な敬意と、ボブのバンドへの完全な信頼があるからこそのことだと思います。

5.新しいボブの歌の世界が聴ける

スタンダード曲集のアルバムとしては、最新の2作、Shadows in the nightと来日記念版のメランコリームードの2枚がありますが、この中の曲が、ライブであれほど良いとは正直思っていませんでした。

スタンドマイクで斜めに構え、遠くを見つめながら「枯葉」を歌い上げるボブ。あのボブ・ディランのそんな姿を60年代、70年代、80年代、90年代、2000年代の誰が想像したでしょうか。そして、その歌に病みつきになるような魔力があると、2014年の誰が想像したでしょうか。

これは、全く新しいボブの歌の世界であり、だからこそ、まさにボブ・ディランだと言えると思います。

ボブ・ディランが他のベテランアーティストと違うところは、次に出すアルバムが最高傑作かもしれないと今でも思わせるところだ」と誰かが言ってましたが、要するに、その年齢でしか出来ないこと、その時代でしか出来ないことをやるので、それが最高傑作になるということだと思います。

「自分の作ったレコードを聞き返すことは無い。自分のコピーをするようにはなりたく無い。」- ボブ・ディラン

60年代にやっていた音楽はその時点でのボブ・ディランがやっていたから最高であり、今のボブ・ディランがやっていることは、74才のボブが2016年にやるから最高なのです。今のボブに「追憶のハイウェイ61」は作れず、60年代のボブに、「Shadows in the night」は作れないのです。

特に今回のスタンダード曲を大幅に取り入れたステージは、ボブの後ろに見える巨大なアメリカポピュラー音楽の遺産、アイリッシュトラッドから、フォーク、ブルース、ジャズ、カントリー、リズム&ブルース、ゴスペル、ロックンロールを引き継ぐ最終ランナーとしてのボブの姿に、アメリカンスタンダード、そしてフランク・シナトラという、もうひとつの大きな遺産を加えるものだと思います。

6.「風に吹かれて」が聴ける

最後に言いたいことはこれです。アンコールで歌われる「風に吹かれて」。

これは、史上最高のバージョンだと思います。

74才の今また、あの歌詞を一つ一つ大切に伝えようとしているのが分かります。

これまでにも、いろいろな優れたバージョン、カッコいいバージョンがある曲ですが、歌詞をここまで丁寧に語りかけるように歌うのは、20歳の最初に作ったころ以来ではないかと思います。

1962年に20歳のボブディランが書いた歌。最初にHow many years?と歌ってから53年が過ぎたことになりますが、今も世界では、人の自由は奪われ、大砲の弾は飛び、人は死にすぎていて、答えは風に舞っています。

50年以上歌い続け、最後かもしれない来日公演で74歳のボブが今問いかけるHow many years?

The answer, my friend, is blowing in the wind
The answer is blowing in the wind

もし、少しでもボブ・ディランに興味があるなら、これを聞くだけでも今回の来日ツアーを観る価値があると思います。


How many roads must a man walk down
Before you call him a man?
How many seas must a white dove sail
Before she sleeps in the sand?
Yes, and how many times must the cannonballs fly
Before they're forever banned?
The answer, my friend, is blowing in the wind
The answer is blowing in the wind

How many years can a mountain exist
Before it is washed to the sea?
Yes, and how many years can some people exist
Before they're allowed to be free?
Yes, and how many times can a man turn his head
And pretend that he just doesn't see?
The answer, my friend, is blowing in the wind
The answer is blowing in the wind

How many times must a man look up
Before he can see the sky?
Yes, and how many ears must one man have
Before he can hear people cry?
Yes, and how many deaths will it take till he knows
That too many people have died?
The answer, my friend, is blowing in the wind
The answer is blowing in the wind

 

今回の来日ツアーも、現時点で残りは東京オーチャードホール2公演とパシフィコ横浜の1公演。

僕も大阪での公演をこれで最後かもしれないという気持ちで観ましたが、でも、やっぱり、また来日してほしいと切に願います。

そして、もうひとつ、日本公演でなくてもよいので、この素晴らしいステージをライブ盤としてリリースしてくれないかと思うのです。